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金沢家庭裁判所小松支部 平成8年(家)54号 審判 1996年3月11日

申立人 高松民江こと金民江

相手方 相田清助

事件本人 井出大樹こと金大樹

主文

事件本人の親権者を申立人と定める

理由

1  本件は、韓国人である申立人が日本人である相手方に対し、韓国人である事件本人の親権者指定の審判を求めているところ、本件記録によれば事件本人は平成5年4月19日に特別永住者(法定)となり前記住所地に居住する者であることが認められるから、我が国に国際裁判管轄権があるというべき(国内土地管轄は家事審判規則70条、52条1項により当裁判所に土地管轄がある。)で、その準拠法は法例21条により子の本国法である大韓民国法によるべきものである。

2  申立人は主文同旨の審判を求め、その実情として次のとおり述べた。

(1)  事件本人は1989年9月21日に申立人と相手方との間の非嫡出子として出生し、事件本人が相手方の子であることを認知する旨の裁判が平成3年7月5日に確定した。

(2)  婚姻外の出生子が認知された場合、父母間で親権を行使する者につき協議しなければならないところ、父である相手方との協議をすることができないので事件本人を養育している申立人を親権者に指定されたく本件申立てに及んだ。

3  大韓民国民法909条4項は、婚姻外の出生子が認知された場合、父母の協議により親権を行使する者を定めるが、その協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、当事者の請求により家庭法院がこれを決定すると定めている。この家庭法院の決定は、親権保有者である父母が倶存して親権を共同行使すべき場合に、その父母が婚姻中でないために父母の共同親権が円満に行使されないために未成年の子の保護が充実されないことが憂慮され、このような問題点を解消するために共同親権主義に対する例外を認定し、単独親権行使者を指定することができるように配慮した趣旨と理解されるところ、我が国の家庭裁判所が民法819条5項に基づき親権者の指定の審判を行う場合と実質を同じくするものというべきであるから、我が国の家庭裁判所の指定の審判をもってこれに代えることができるものと解すべきである。

4  本件記録によると、上記2の事実並びに本件親権者の指定について、相手方は申立人を親権者に指定することを承諾しており、申立人は自らを親権者に指定することを望んでいること、事件本人は申立人と同居していることが認められ、したがって、事件本人の福祉のためには、事件本人の親権者を申立人と定めるのが相当である。

よって、主文のとおり審判する。

(家事審判官 遠山和光)

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